ーいろんな広間やいろんな廊下を毎日のように歩きまわっているのだが、あいかわらずときおりホルは、あちこちさまよっている残響に出くわすことがある。ずっと昔、軽率にもはりあげてしまった叫び声のようなものの、残響だ。ー
ミヒャエル・エンデ『鏡の中の鏡』
鏡の中の鏡の世界では、音は全反射してやがて空間を埋め尽くすのだろう。
それは雑多な音のノイズになり、やがて均質化した音の静寂になる。
直角に接する鏡は、反射が2度起こるため右と左が入れ替わり、映される対象の本当の姿を見ているような気分になる。しかし、この鏡に映る姿は残響のように本質を含みながら、本質そのものではない。虚像の虚像である。
書かれた文字を読むためには、鏡の中の鏡の世界に足を踏み入れるしかない。
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